2016年04月09日

民泊規制緩和VSラブホテル規制

国の規制改革により民泊等の旅館業法規制緩和が国レベルでは進んでいます。しかし実態としては思うように旅館業法(簡易宿所等)の許可は取得できません。この要因として建築基準法や消防法等の安全に関する規定があります。
更に問題となるのはラブホテル規制です。国レベルのラブホテル規制は風営法で行われていますが、ラブホテルの態様は地域により様々です国レベルの一律規制には限界があり、実質的な規制は自治体の条例等で行われています。
一般的な感覚として民泊OK、ラブホテルNGという規制の考え方に異論を唱える人は少なく、これが実現できればなんの問題も無いのですが、現実的にはこれが簡単ではありません。
昔はラブホテルといえば外観はお城の様な造りで、入口には大きなカーテン、フロントはあっても小さな小窓で、ロビーには部屋を選ぶ案内板、それを押せば部屋のランプが光り従業員に会わずともチェックイン完了、部屋に入れば回転ベットやらウォーターベット、部屋は鏡だらけのお風呂はガラス張り、料金の支払いは自動精算機やら古い所ではエアシューターといったのがラブホテルでした。
風営法ではこの様な構造や設備を一定の組合せで有しているホテルをラブホテルとして定義付け規制を行っています。
しかし最近のラブホテルはフロントに人がいて鍵などが手渡しされたり、部屋の作りもシンプルなものが増えています。ただ利用実態だけがラブホテルで構造や設備は一般のホテルと変わりがなくラブホテル規制の対象にならないケースが増加しています。利用実態だけでラブホテルの定義を行う事は難しい部分もあり、例えばカップルの利用が主となる事で定義すれば新婚旅行客が多いリゾートホテルまでもがラブホテルになりますし、休憩利用で定義をすれば最近増加傾向にあるビジネスホテルやシティーホテルでデイユースを行っているホテルまでもがラブホテルとして規制されてしまいます。勿論部屋の中でカップルが行っている行為を規制対象にする事もできません。
その結果生じた問題は偽装ラブホテル問題です。構造や設備が一般のホテルと変わりない事から規制の対象とならずにラブホテルの建築が学校の近所等でも行われる結果となりました。更に一般のカップルが利用するラブホテル以外にも性風俗店がサービス提供場所として使用するプレイルームもビルの一部で旅館業の許可を取得し営まれるケースも多発しました。

この問題を解決すべく各自治体は偽装ラブホテル対策として、国が定める旅館業法の基準以外に様々なホテル建築規制を行っています。その事例としては食堂の設置基準の強化、定員2名部屋の設置割合制限、簡易宿所での帳場設置義務、簡易宿所での一部屋あたりの最低定員を4名、帳場の規模基準の設定、シングルルームの設置義務化、シングルベッドの幅制限、また大阪市では一定の条件を満たさない宿泊施設は最低規模を100室とする等があります。これによりラブホテル(特に小規模で風俗店のプレイルーム化される様な施設)の対策は万全とは言えないものの大きく前進しました。
しかし近年の民泊やインバウンド向けホテルにおいては、この事がネックになる事態が生じています。民泊等とラブホテル、利用する人の意図は大きく異なりますが、施設の構造や設備は類似する点が多々あります。その事例を何点か検証してみると次の様になります。
・食堂に関して
民泊等の場合は施設規模が小さく施設内で食堂まで設置できないケースやツアー客が多く食事を施設内で行わないケースが多い。ラブホテルは食堂での飲食を行わない。
・帳場に関して
民泊の場合はマンション等をそのまま利用する事から帳場が存在しない。ラブホテルは一般のホテルとの様に大きな帳場を必要もしない。また自動精算機等の設置があれば帳場を必要としない。
・シングルルームに関して
インバウンド向け施設においては日本人向けのビジネスホテルの様なシングルルーム需要が少ない。ラブホテルにおいてはシングルルームは必要がない。
・施設規模
民泊は比較的小規模で運営される。ラブホテルの規模は20〜60室程度が運営上理想。実質的に性風俗店のプレイルーム化されている施設においては更に規模は小さい。
他にも共通点は多くありますが、各自治体が定めるラブホテル対策の規定は民泊運営で旅館業許可の取得時には抵触する可能性が高くなっています。だからと言って、民泊を推進する為にこれらの規制を撤廃すれば、今までなんとか抑えていた偽装ラブホテルに対しての規制を撤廃する事となり、今まで行ってきたラブホテル対策は意味をなさなくなります。
ラブホテルは性風俗店を経営する人達は既に民泊規制緩和を待ちわびているといった話もあります。ラブホテル等を運営する経営者さん達は従前より旅館業法等の規制や手続、宿泊施設の工事方法や消防法等を熟知していますので、民泊規制緩和で旅館業法等の緩和が行われれば真っ先に許可取得が完了するのは偽装ラブホテルではないかと思います。
特に今回の民泊規制緩和では小規模な施設の設置が可能になる可能性がありますので、一般のカップルが利用するラブホテルよりも、マンションや雑居ビルの数室で実質的には性風俗店のプレイルームといった小規模な施設で民泊を装った旅館業許可の取得が行われ、あらゆる場所が性風俗店のサービス提供場所となる恐れは否定できません。

国は自治体に対して小規模施設でも旅館業許可の取得を柔軟に対応する様に求めていますが、地域の治安に責任がある自治体としては、どのラインを落としどころにするかがポイントと思われます。
先般の風営法改正でもそうですが、各自治体の条例等は必ずしも国の意向と一致するとは限りません。地方分権等の観点から国と地方は上下関係ではありませんし、許認可権が自治体に存在するものに関しては規制緩和を行って問題が生じた場合の責任が自治体に生じる事からどうしても対応は慎重になります。
外国人旅行客の増加で宿泊施設が不足している事は事実であり自治体としても対応を苦慮している事も事実あり民泊受入れも検討課題ですが、建築基準法の容積率緩和で大規模ホテルの新築や増築が促進されていく事が理想といった事が自治体の本音の様です。

今後、規制緩和の方向へ進み民泊と共に偽装ラブホテルが増加し場合によっては住宅街のマンションの1室が風俗店になってしまうのか、それとも偽装ラブホテルや住宅施設内での風俗店は厳しく規制されるが合法民泊が普及しなくなるか、どちらに流れるのでしょうか。
理想論を言えばこの両方をうまく実現できる法規制が必要と思います。ところが、現在の民泊規制緩和議論で緩和を要求する側からこの提案がなされていません。
風営法改正の時に勉強しましたが、規制緩和を要求する場合、要求により他に別の問題が生じる事を想定し、その対策案を添えて自らの緩和要求をする必要があります。そこを行っていないと当該法令を所管する以外の官庁から指摘が入ったり、自治体が受入れを行わなかったりします。
実際に大阪では特区民泊に関して立入権が存在しない事から一度は条例が否決されています。
ルールを考える行政、議会、事業者、住民等全てがさらに広い視点で議論を行う段階かと思います。
posted by 行政書士雨堤孝一事務所 at 17:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 旅館業法 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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