2015年07月24日

何故風営法改正で遊興が問題となっているか

今回の風営法改正により遊興という言葉が大きな問題となっています。今回の改正では設備を設け深夜にお酒を提供するお店で客に遊興をさせる場合は特定遊興飲食店営業として許可が必要とされました。許可制である事から無許可である場合には懲役や罰金等の刑罰を受ける事になります。
そもそも風営法では深夜飲食店(酒提供の有無を問わない)において客に遊興をさせる事は禁じられていました。ただ改正前の法律では刑事罰はありませんでした。今回の改正においては例外なく禁止であった深夜に遊興させる行為に関して酒類提供が無い場合は規制の撤廃、酒類提供のある場合には許可制での解禁として従前からの規制緩和であるいうのが国の見解です。
しかし、刑事罰の無かったものに対して刑事罰規定を設ける事は規制強化であるとの反論意見が多く出ている現状があります。その意見の中には今までやっていた営業ができなくなるとの声があります。ただ理論上では今までそもそも禁止されていた事なので新たに営業ができなくなるものが生じる事はあり得ないと考えられます。できなくなる事があると主張する事は罰則の有無を問わず現在違法状態があると主張してるとも受け取れます。
改正できなくなると主張されている事の例としてはフジロック等のフェスがあります。これをできなくなると考えるとフジロックは現状において多くの人が集まる違法イベントとなります。そもそも法に問題があろうとも大型イベントが違法状態である事は大問題です。他にもこの様な問題は各所において生じています。
ただこの問題はできなくなる事が理論上増えたのではない事から今回の法改正が原因ではありません。そもそも改正前の法律段階で遊興の定義における曖昧さや、その規制主旨が問題です。
元々深夜に飲食店で遊興を禁じている理由は本来人は深夜寝るものであるとの考え方から深夜静かに眠りたい人の邪魔をしてはならない等の主旨があります。そうであるならば寝ている人の邪魔とならない様な野外フェス等は規制の対象でないと考えるべきとなります。しかし現在警察庁が示している解釈においてはショーや生バンド等の演奏を聞かせる行為は遊興にあたるとされており、かなり幅がひろくなっています。なお、ここでいう解釈とは警察庁がだしている解釈運用基準であり、法律そのものではありません。この問題を解決するには解釈をより法の主旨に則り具体的に示す事が一番と思います。

この深夜遊興禁止規定は改正前あるにも関わらず何故今問題となっているのでしょうか。
深夜に遊興させる事を禁じている事は改正前から存在するわけであり、改正によりできなくなる営業は本来生じないはずです。しかし今問題となっている事には複数の原因があると考えられます。
先ずは今までこの規定の存在が広く理解されていなかった事です。従前から深夜遊興禁止規定が広く知られていたら、もっと前から深夜遊興禁止に関する議論がされていた可能性もありますし、元々これに該当する営業は行われていなかったと思われます。しかし今回法改正においてクローズアップされた事で、この規定に関して疑問を持つ人が増えた事により今となってこの問題が議論される結果になっています。
次に考えられる事として、深夜遊興禁止に関して深堀をし過ぎている事が考えられます。今まで深夜遊興禁止に関してはあまり深堀をした議論はなされていません。またこの規定違反で大きな事件は起きていません。深夜に飲食店で大騒ぎしており近所から苦情通報があった場合等には警察官がこの規定を利用して指導を行う等が主な運用であり実害が無ければ取り沙汰される事もあまりありませんでした。(深夜酒類提供飲食店営業の届出時に指導されるケースはあります)しかし今回の法改正時には営業者等が深夜遊興の具体的ケーキを沢山持ち出して議論を進めていくと、その多くが遊興に該当する恐れがあるとなっていき問題が広まっています。また、本来の定義なら該当しないものまでもが、該当すると広まり実際の規制よりも厳しい内容で世間に広まり問題が大きくなっている部分もあります。
最後に最大の問題は、ダンス規制改革において短期間でダンス規定だけを単純に取り除いた事が考えられます。元々風営法の構造は、飲食、接待、ダンス、遊興、遊戯等を様々な形で組合わせて構成されており、それらは脱法的行為を行う者にとって抜道を潜らせない状態となっています。そんな中で風営法からダンスという文言だけを取り除くという改正を行った為に今まで複雑に絡みながらもバランスが維持できていた構造が崩れる結果になりました。これにより脱法的行為の抜け穴も生じますが、過剰な規制が生じる事にも繋がります。
今回の法改正議論においては関係当事者からの意見聴取を実施したとの見解がありますが、基本的にはダンスに関係する者に限定されています。しかしダンスというのは風営法構造の中で一つの要素に過ぎず、そこにメスを入れるならば構造全体の見直しや検証が必要となります。勿論全体を見直すならばパチンコ等の遊戯業へも影響は必須ですが、そこを触れる事により改正議論への進展に影響を及ぼす恐れがあるとして、部分的な改正に止めたという説もあります。
もし全体を見直すならばダンス以外の関係当事者らにも意見聴取を行ったりする必要があるはずです。しかし、短期間でダンス規制問題を解決する事が優先され半ば強引にダンス部分だけの改正となりました。その結果、ダンスは遊興に定義され、さらには深夜のダンスは許可が必要との考えから、深夜遊興全てが許可制へと繋がりました。また、ダンス以外の部分においても若干の改正が行われていますが、ダンスに関係ない事業者からの意見聴取や周知は未だ全く実行されていない問題もあります。
今回の法改正は通常よりも極端に短い検討期間で実施されており、その結果当然の事ながら不具合が生じていると考える事ができます。

今回の遊興問題を含め風営法規制のあり方を整備するには、風営法全体構造からしっかり議論しなおす必要があると思われますので、今回の法改正が最終形とせず、この先もしっかり議論される環境が必要と考えます。
posted by 行政書士雨堤孝一事務所 at 17:32| Comment(0) | TrackBack(0) | 法改正 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする