2015年04月28日

風俗営業許可申請の地域差

風俗営業許可申請は風営法に規定されており、風営法とは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」として全国で適用される法律として制定運用されています。
全国で適用される法律ですから、どの様な営業を行う際に許可が必要や、どの様な行為を行えば違反になる等は原則として同じです。
しかし、許認可手続となれば話は変わります。風営法に基づく風俗営業許可等の許可権限は各都道府県公安委員会にあり、その許認可権者によって許認可に関する細かな規定はことなります。
そもそも風営法が規制の対象としている「風俗」の意味とは「世俗」「風習」「文化」等を指しており、これらは各地域により当然異なります。その異なる習慣等に適切に対応すべく風営法では細かな規定は各都道府県の条例を設けさせ、さらに細かな許認可等に関わる判断は各都道府県公安委員会に委ねる事とされています。
また各地域により今まで発生してきた違反や事件等の再発防止の観点から運用方法を考えている部分もあり、各地域における運用差異は各地域の繁華街そのものが生み出したものであるとも言われています。


各都道府県により運用が異なる点の代表例をいくつか書きます。
・風俗営業許可取得までの期間
風俗営業許可に関しては行政手続法による標準処理期間を定める行政手続には馴染まないものとして、基本的には標準趣里機関の定めは行われない事とされていますが、各都道府県公安委員会においては許可までの目安期間を定めているケースがほとんどです。
風俗営業許可に関する許可期間の全国的な目安としては55日という考え方がありますが、同じ55日でも土日祝日を含んで計算する地域と除いて計算する地域があります。
また、許可の種別によっては45日とする等、異なる日数を定めている都道府県もあります。
さらに、都道府県により保健所での食品衛生許可手続中に風俗営業の申請が行えるエリア、食品衛生許可取得後でなければ風俗営業の申請が行えないエリアもあり、実質的にOPENできる状態を構築する期間が大きく異なります。
・申請書類や図面等
許可の申請には様々な書類や図面を添える事となります。これらの書類は全国統一的に内閣府令で定められてはいるのですが、やはり地域によって違いがあります。
書き方に違いがあったり、添付する書類に違いがあったりします。勿論内閣府令等で全国的に統一されているものはどの地域でも必要な書類となりますが、やはり地域事情に応じて各都道府県公安委員会が許可判断を行うに際して必要な書類が異なりこの様な事になっています。また、許可申請の事務的な流の違いから書類を1通のみ提出で可能な地域もあれば、複数の申請書を提出する地域もあります。
図面に関しては書類以上に地域差が生じています。これは各都道府県公安委員会により、風営法に定める構造設備要件の解釈に差があったり、検査の方法等に差がある事から生じています。
・構造設備要件の解釈
風俗営業許可の要件として重要である構造設備要件の解釈に関しても地域により差があります。その代表例は客室内の見通しに関する事です。
全国統一的に定められている事としては客室内に見通しを妨げる物を設置してはならず、その見通しを妨げる物とは高さが概ね1メートルを超える物とされていますが、この見通しを妨げる物とは何を示すかにおいての解釈に差異が生じています。また客室内にあるカウンターに関しても高さ制限の対象とする地域もあれば、カウンターの設置位置により違う判断をする地域、カウンターは見通し規制の対象外とする地域があります。
他にも1メートルを超えない衝立であっても客室内にあれば、衝立があればそれは客室そのものの区切りであると判断し、衝立の区画毎に最低面積規制の規定を適用する地域もあります。
・他行政との連携
風俗営業の申請は警察署を経由して各都道府県の公安委員会宛に行いますが、地域によっては消防や建築行政と警察が連携し許可審査を進める場合があります。これは営業所に対して公安委員会が許可をしたとしても、消防法や建築基準法に抵触しており、火災等が発生した場合に多くの人命被害を出さない様にする目的があります。過去にも繁華街においては何度も雑居ビル火災等で多くの被害が発生しています。
ただ風営法は安全等に関する法律でない事から、公安委員会は消防法や建築基準法に基づいた指導等を行う事はできません。また、風俗営業許可申請は行っても消防法や建築基準法に基づく必要な手続等を行わないといった営業者も存在し、安全性に問題が生じるケースが多くあります。
そこで、風営法に基づいた審査を行う公安委員会(実作業は警察)と消防や建築の行政が風俗営業許可時は連携するといった地域が多くあります。
しかしこの場合も手続の流れ等は地域によって大きく異なります。何故ならば風営法に基づく運用は各都道府県の公安委員会なので全国に47となりますが、消防や建築行政は各市町村により異なるので更にルールに差異が生じてきます。
地域によっては警察署に許可申請書類を提出する際に消防や建築に関する書類も同時に提出し、警察側から消防や建築の行政に書類が送られる場合や、申請者側が各行政に書類を提出する場合、更には検査は様々な行政期間が合同で行うケースもあれば、各行政が個別に行うケース等様々です。
勿論、風営法の規定にだけ則り、許可申請の手続においては他行政との連携を行わない地域もあります。


これらは一例に過ぎませんが、今まで営業を経験した方が新たな地域に進出する際等は、今までの地域と同じやり方では許可申請が行えない可能性がある事を認識する必要があります。それを知らずに店の工事、申請等の準備、開店日の設定を行うと大きな損害が生ずる場合があります。
これを読まれた方は風営法は特別に厳しく営業者にとって負担の大きい法律だと思われるかもしれませんが、実はこの様な問題は風営法に限らず多くの行政手続で生じています。
この傾向は地方主体の行政が進んでいく中で、より大きくなるとも考えられます。
posted by 行政書士雨堤孝一事務所 at 02:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 風営法全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年04月09日

風営法のラブホテルと世間から見たラブホテル

日本全国にラブホテルと言われる施設は1万軒弱存在すると言われています。

そしてラブホテルは風営法においては店舗型性風俗特殊営業として定義されており、営業を行うに際しては公安委員会に対して届出を行う必要があります。
下は公安委員会に対して提出されているラブホテルの届出件数です。

平成21年3837件
平成22年3692件
平成23年6259件
平成24年6152件
平成25年6027件

風営法の届出件数が実態のラブホテル軒数に比べてかなり少なく見えます。無届の業者比率がかなり高いと見えます。実際にそうなのでしょうか?
実は風営法で定義するラブホテルと一般的に言われるラブホテルの定義には大きな違いがあります。
世間一般的にはカップルが性行為等を目的として利用する施設と考えられてるが、風営法では次の通り定義されています。

風営法第2条第6項第4号
「専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。以下この条において同じ。)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る。)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業

少しこれを整理すると
@主としてカップルが利用
A一定の建物
B一定の客室
この@〜B全てが揃った時に風営法のラブホテルとなるとされています。
カップルが性行為等の目的で主として利用していてもABに該当しなければ風営法としてはラブホテルに該当せず、法律上は単なるホテルとなります。これにより法律上はラブホテルとはされない「偽装ラブホテル」「類似ラブホテル」が問題となり平成23年に法改正が実施されABの定義見直しが行われました。この関係で平成23年に届出件数が倍増しています。
どういった部分がABに該当するかが法律上のラブホテルとなるかですが、
Aは食堂やロビーが狭い、フロント等が目隠しされている、カギを手渡しされずとも客室へ入れる等です。
Bは回転ベッドやガラス張りの浴室がある、SM等の設備がある、自動精算機がある等です。

http://fuei-kaisei.com/f_hotel.html
詳細はこちら

風営法のラブホテルと定義されれば主に以下の様な規制がなされます。
・出店時の立地規制
・敷地外での看板設置禁止
・年少者の立入禁止
法規制以外にも
・金融機関との取引で制限される場合がある
・求人や集客広告に制限がある

最近のラブホテルは回転ベッドを設置したりする等の卑猥なイメージの客室よりも、スタイリッシュな客室が増えており、利用者からも好まれる傾向があります。
また、昔は出入口が見え難い感じになっていたり、できるだけ従業員と顔を合わさない構造が好まれていましたが、最近では出入口もスタイリッシュであったり、フロントで従業員と顔を合わす事に抵抗を示さない利用者が増えてきました。
そうなってくると、AやBを設けなくともラブホテルの営業は可能になります。AやBを設けないという事は風営法に基づきラブホテルの規制を受ける事がなくなります。
その結果、風営法のラブホテルと世間から見たラブホテルの数が開きが生じてきます。また、規制を受けない関係から小学校の近所にラブホテルが建設されたり、ラブホテルの看板が設置される可能性も大きくなります。また、年少者が利用する事も法律的には可能となります。

平成23年の改正に際しては可能な限り全てのラブホテルを規制の対象としたい考え方と、規制の方法によっては一般のホテルまでが規制対象になってしまう部分で議論が繰り返され、結果として一般のホテルにまで規制が及ばない範囲の規制となりました。
議論の段階では休憩利用があるホテルはラブホテル等との意見もありましたが一般のホテルがデイユースプラン等を行っている事等から対象外とされました。
また、風営法によるラブホテル規制制定当初カップルが主として利用するホテルはラブホテルとすべきとの議論もありましたが、ハネムーン向けのホテル等がこれに該当し、大手旅行会社のハネムーンツアー等に組込めない等の問題があり、構造等の基準も設けられました。

平成23年に一旦増加した届出件数も24年以降から再び減少しており、今後も減少すると考えられています。
本来規制が必要なラブホテルのうち風営法の網から外れていくホテルが増えていけば、再び風営法規制見直しを行って規制対象の拡大を行うか、そもそもラブホテルを風営法で規制する必要があるのか等の議論が繰り返される日も近いと感じます。
posted by 行政書士雨堤孝一事務所 at 15:30| Comment(0) | TrackBack(0) | 性風俗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする